通風と採光

■「夏は涼しく、冬は暖かい家」

心地よい住まいをつくるには、光や風といった自然環境を上手に取り入れくことが大切です。プランの段階から建物形状や窓の位置などを検討し、室内の温度、湿度、通風などの温熱環境をバランスよく計画することが重要となります。

なるべくエアコンなどの機械設備に頼らない、快適で省エネな暮らしを目指しましょう。また採光や通風の工夫は、カビや腐りの原因となる湿気や結露対策ともなります。
冬は南からたっぷりと暖かい日差しを取り込み、夏は風が家の中を抜けてくれるような「夏は涼しく、冬は暖かい家」を考えてみましょう。

■採光の基本

・配置計画

基本は、なるべく南側を空け建物を配置しましょう。中庭や南東側より効率的に、必要な採光通風を確保する方法もあります。とは言っても、南側に高い建物が建っていたり、隣の大きな窓があったりと敷地条件は様々なので、周辺環境を考慮しながら検討してゆきます。
都市部の密集地や狭小敷地では、採光通風を確保することが難しくなりました。小さな坪庭を設けたり、2階や3階にリビングやダイニングなどのパブリックスペースを配置することも考えられます。

・太陽高度

東京(北緯35度)の場合、夏至の太陽入射角は78°春秋分55°冬至は32°となります。この入射角を利用し、窓の配置や庇の出寸法を調整してゆきます。夏の日差しを遮り、冬は太陽光を室内に取り入れることが開口部計画の基本となります。
白い壁に太陽光を反射させ上階から下階に光を落したり、反射光を利用し北側から採光を確保する方法なども考えられます。お寺の石庭で白砂を敷き、月の光で軒裏を照らすなど昔からある知恵なのです。

■通風の基本

・風の通り道

夏は南から北へ風が流れるように、冬は上階に溜まった暖かい空気を下階に、循環させる方法などを検討します。風の流れは、室内空気が対角線上の窓から押し出される圧力の差を利用した「風力換気」や、暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降しようとする性質を利用した「重力換気」があります。
これも昔からの住まいの知恵で、京町家の坪庭など気圧差を利用して涼風を流すという方法も有効ですね。

その地域の卓越風や風の特徴を知ることができる「風配図(ふうはいず)」が気象庁の㏋で調べられるので、総合的に検討してゆきます。(*上図)
また、建物を長持ちさせるため、壁や屋根の中にも、湿気が溜らないよう空気が流れるようにする「通気工法」という建築技術も大切です。