「法然院にて」
■ 日々想々"時間をのみこむお寺の庭で、僕のみこまれてしまいました。
年に数度、京都に行きます。そして毎回訪れる場所があります。東山山麓、自然に囲まれた鹿ケ谷に位置する小さな禅寺、法然院。法然院は、鎌倉時代初め法然上人の草庵よりその歴史が始まります。一度は荒廃しましたが、江戸時代初期1680年、知恩院第三十八世萬無和尚の発願により、現在の伽藍の基礎が築かれたとのことです。
山門までのアプローチは2つ、女坂と男坂。女坂は勾配が緩い石畳の坂道。木々に囲まれたこの道は微妙に折れ曲がっていて、山門まで日常の世界から静寂な空間へと導きます。山門は三門とも書き、この「三」は空と無想と無作を意味します。男坂はその名の通り急な坂道、帰りの道。山門はこじんまりとした藁葺きの屋根、開口部分は借景となり周りの自然に溶け込んでいます。門を抜けると左右に白砂壇。白砂壇は長方形の白い盛り砂、その表面には毎日、竹ボウキで砂紋が描かれ、季節ごとに違う砂紋となっていて、何度訪れても新鮮な気持ちとなります。そして砂壇は水を表わしておりその間を通ることは、心身を清めて浄域に入ることを意味しているそうです。 境内には、白砂壇・講堂・経蔵・本堂・方丈。入山料は無料で自由に見学することができますが、普段使われている寺なので建物内は春と秋の特別公開の日でないと見学することができません。
しかし見所はいっぱい、春は山鳥さえずり、夏は打ち水された石畳や深緑の苔、秋は紅葉、雪景色、池の横にある「つくばい」も面白い。季節の花で飾られ、葉っぱの先端から水が滴り落ちるデザインとなっていて毎回新鮮な感動を与えてくれます。そしてもう一つの楽しみが本堂の前に置いてある仏教や禅、アート関係の書籍、それらは寺を訪れた人たちが、自由に手にとって読むことができます。その中でもお気に入りなのが、深井ゆうじんのスケッチブックに墨で書かれた詩集。いくつか引用してみると「手ぶらが好きや、手ぶらで今日に触りたい、手ぶらで今に触りたい」「なんで答えが欲しいんやろ、なんで理由が欲しいんやろ、なんで納得したいんやろ、なんで、なんでって思ってるんやろ」「時間をのみこむお寺の庭で、僕のみこまれてしまいました」「僕はどこから生えているのだろううか」などなど、どれもシンプルで力のある言葉、特にお寺で読むと心に響きます。
また法然院には「法然院サンガ」があります。サンガとは、サンスクリット語で共同体を意味する言葉、漢字では僧伽(そうぎゃ)と書き、これを略したのが僧。 寺を布教活動や先祖供養の場としてだけでなく、地域活動の拠点、アーティストを育てる場、共同体の場とするために、コンサート、ワークショップ、個展、シンポジウムなどの様々なイベントがここで企画されています。300年以上の歴史を持つ古い小さな禅寺、なんど訪れても、新しい発見があのです。
家づくりニュース記事より