狭小住宅は床面積は小さいけれど、ほんの少しの工夫で実際の面積よりも広く感じられることができます。自邸「中延の家」を例にご説明します。
■室内壁は最小限とし、視線が建物全体にいきわたるようにします。
・壁のない螺旋階段
螺旋階段と各階の仕切りはなくし1階から3階まで吹き抜けのような空間にしています。そのため上下での視線が通ります。また階段に壁がないので、そのまま各部屋とつながり水平方向の視線も通ります。



・ベランダの窓から視線を通す。
「中延の家」の3階にはコの字プランの空いた部分にベランダがありますが、そこに面して出入りができるテラス窓が2か所、キッチン側に腰窓1か所があります。大きな窓でもベランダが道路に面していないので近隣からの視線はあまり気になりません。外部のベランダを通してリビングからキッチンまで視線がまっすぐ通るので、外部のベランダもリビングの一部のように感じます。季節のよいときは窓を開けておくと 空間もつながりひとつの空間のように広く感じられます。



■視覚的に広がりを感じさせる効果がある仕上げ材の使い方や色を選ぶ。
壁と天井の仕上げ材、または色を同色にすることで、一体に見え区切られた感じがなく、広がって見えます。道路斜線、高度斜線などで3階の壁が斜めになっていますが、斜めの壁と天井が同じ白い和紙で仕上げることで天井と壁がつながることで広く感じます。色は白色の柄を感じさせないものがより広く感じられます。

■天井高さを高くする。
3階はできるだけ高さをとり3.4mほどあります。斜線により斜めの部分はありながら天井の高さが高いことで圧迫感を感じません。

1階の事務所も床面積は7.5畳ですが、天井高さを3mとし、壁も珪藻土の白い色にしています。天井は珪藻土クロスを張っています。大きな窓もあり外も見えるため視線を通り抜け実際よりも広く感じます。

■用途を兼ねる。
限られた床面積の中で、いろいろな用途の空間をつくってしまうと狭小住宅の場合納まりません。そこで用途が兼ねられるものは一緒にします。
・玄関と螺旋階段
玄関に入るとすぐに階段の踏み板があります。玄関のスペースをなくし階段の踏み板と兼ねています。


・洗面カウンター
2階は浴室、トイレ、寝室があります。浴室の隣は洗濯機を置くスペースと脱衣のための1畳ほどのスペースとし、逆に洗面カウンターを3畳の多目的な空間に設置しました。洗顔としても、トイレの手洗いとしても、この洗面カウンターは兼ねています。また片側でパソコン作業ができるようなデスクとしての機能ももたせています。広めの廊下のような、空間を仕切らずに階段とつなげています。

■天井高さが低い部屋は、間接照明にして出っ張らないようにする。

■納戸、壁面収納、ロフトなど収納をつくることでモノが部屋に溢れないように。
・1階寝室は4.5畳と小さな部屋ですが隣に2畳の布団や服などいろいろなものが入る納戸のスペースがあります。そのため、4.5畳のスペースにはほとんどモノを置かないようにしています。小さなスペースしかとれない時、別の場所に収納できる場所をつくっておけば、部屋がモノで溢れてしまうこともありません。
・ロフトを活用して大きめの荷物を収納する。狭小住宅は、壁面収納を計画しモノが部屋に溢れないようにすることが快適に暮らす上で大切だと思います。


最後に要点をもう一度まとめてみます。
・仕切り壁は最小限につくる。
・視線が建物全体にいきわたるようする。
・視覚的に広がりを感じさせる効果がある仕上げ材の使い方や色にする。
・天井高さを高くする。
・用途を兼ねる。
・天井高さが低い部屋は間接照明などにする。
・納戸、壁面収納、ロフトなど収納をつくることでモノが部屋に溢れないようにする。