心地よい場

昨年末、完成した深大寺の家です。敷地は宅地開発されたばかりの土地、家族3人で住まわれる木造2階建ての住まいです。

仕事を依頼されると、先ずは敷地を訪れ設計の手掛かりになるものはないかと、時間を掛け歩き回ります。

あたり一帯はきれいに整地され、売り出し中というノボリがいたるところになびいているという場所。計画地は、菱形に変形しているため建売業者が手をつけず、その中にポツンと残っていました。近い将来、同じタイプの建売に取囲まれてしまうだろう、この敷地。しかし道路を挟んだ向こう側に、緑豊かな庭を持つ古いお屋敷がありました。

この庭の大きな木を室内から眺められる、心地よい住まいがつくれないかと設計が始まりました。

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深大寺の家には、大きなハイサイドライトとテラス、螺旋階段があります。2階に上がれば何処からでもハイサイドライト越しに緑が愉しめ、テラスは隣家の視線気にせず部屋の一部としてつかえます。そして螺旋階段からは心地よい光と風が入ってきます。

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カルロス・カスタネダの本の中で、インディアン呪術師ドンファンが、カスタネダに自分とってもっともパワーを感じる場、心地よい場を探しあててごらん、という話がでてくる。あたえられた場所はそれほど大きくない場所、しかし何処も同じように見えて、なかなか思うような場が見つからない。結局、何日もかかってやっと心地よい場を見つけるという話。

住宅の設計も、敷地に入る光の方向や風の流れ、隣家の窓位置や関係など、場所の特性を十分に読込み、いくつもの心地よい場を見つけ、それらを上手に繋ぎあわしていく作業かなと、思った次第なのでした。