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コラム

「暮らしの知恵や工夫」

■ 家づくりは町づくり。

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京都で生まれ、子供の頃京都御所向かいの古い町屋に住んでいました。表は京格子・犬矢来に瓦屋根、玄関横には“ばったり床几”普段は壁に掛かっていて、必要に応じてバッタリと上げたり下げたりする長椅子のようなもの、ここでは夏の夕涼みをしたり、近所の人が立ち話をしていました。(今ではほとんど使われていませんが…。)格子戸をくぐると玄関土間~台所~坪庭を繋ぐ通り庭となっていて、夏は、玄関戸を開け放し坪庭に水を撒くと気圧差で風が抜けるような仕組みとなってました。通り庭の横には、表の間・中の間・そして奥の間に繋がる坪庭、夏は風が通る葦の建具に取替え涼をとり、冬は雪見障子とし庭を眺められました。その先は、増築され続け迷路のようになっていて子供の探検の場所には最適でした。間口2軒奥行き25Mぐらい典型的な“うなぎの寝床”でした。

実際そこでの暮らしはというと、もともと町屋は夏向けのつくりだから、冬はとことん冷える、バリアフリーとは程遠く部屋の中はどこも薄暗くて段差だらけ、建具や壁・屋根の手入れも結構大変、設備的なものはほとんど無し。地味で、古臭くて陰気な雰囲気…。決して便利で快適な住まいとは言えませんでした。
しかし使いづらいのだけど妙に落着き、空間の変化や四季の移ろいが感じられ、生活が楽しめたような気がしました。その頃の空間体験は今でも鮮明に記憶に残っており、設計の仕事をするようになり、とても貴重なものとなっています。

kurasi02 住まいのシステム化・標準化・経済効率性・利便性・・・という流れに押され、日々美しい建築や文化習慣が消えて逝くような気がします。京の町屋も例外ではありません。もともと町屋は、町中に建っているため現代の生活や税金・建築の基準法との間にズレが生じてき、維持していくのが難しくなってきています。和の暮らしが好きじゃないと日々の手入れも大変です。そして伝統的な意匠や暮らしの知恵を無視した性能優先の住宅やマンションが増えつつあります。連続的な町屋の町並みに突然、ペラペラのメーカー住宅やピンク色輸入住宅が建ち始めています。環境破壊、猥褻物陳列罪です。建る方にも住む人にも意識やモラルの低さを感じてしまい残念です。保存地域内に建っている伝統的な町屋には行政よりの法的規制・補助等で守られているのですが、ほとんどの割合を占める指定地域外の町屋は対象外です。


だからといって、昔の町屋をそのまま建てようとしても、やはり現代の暮らしとはズレがあり、また今、同じ物を建てるとなると建設費もかなりな額になってしまいあまり現実的ではないのでしょう。断熱やバリアフリー・便利な設備機器・防犯…等々性能的な部分は最低限必要だとは思いますが、それらのみでは心地の良い住まいはつくることができません。日々の暮らしに楽しみや余裕を持たせてくれる、豊かな空間の演出や美しいデザイン構成/周りの環境との調和も欠かすことができない要素だと思います。

最近少し救われるのは、若い人たちやアーティスト/外国人が廃屋寸前の古い町屋を安く借り、自分たちで壁や床を補修し和のイメージをセンス良く生かした住まいやお店も増えてきたことです。また町家の有効活用を支援するネットワークなども出来てきました。(もちろん建築家たちもがんばっています。)
伝統的な空間の考え方や暮らしの知恵を現代的な技術・素材・手法・視点で表現できないか、また空間の奥行き・風情・自然との関わり等々、感性に関わる部分も、大切に考えてゆきたいと思います。

kurasi03 京の町屋は、具体的なわかりやすい例だと思います。しかしどこでも同じだと思います。住宅はそこに暮らす人だけのものではなく、その町の一部です。住宅が集まり町となりその町の環境や歴史・文化を形づくってゆきます。
家をこれからつくろうと考える時、自分の家のことだけではなく廻りの環境や、家が周囲にあたえる影響のことなどもぜひ考えてほしいと思います。新建材ばっかりでつくられたオリジナル性のない新興住宅地は歴史が感じられないし、何か空々しい感じがします。趣ある住宅街に環境を無視した異型の建物やピンクや黄色の住宅が建つと、がっかりします。またその家に住む人のセンスも疑がいます。逆に周りが環境の悪い所でも、美しく雰囲気がある家が建っているとホットしたり、またそこが街のランドマークとなったりもします。その家の前をいつも通る子供の心象風景ともなるでしょう。家づくりは、多くのことを同時にバランスよく考えなくてはなりません、構造や断熱から収納・キッチン・コスト…細かい技術的なことから、これからの生活・町づくりから地球環境に関する問題、これらはもちろんわたしたち建築家が考えアドバイス・提案していかなければいけないものです、しかし住まわれる方の意識や考えも大きく関ってきます。家づくりを始めると、とかく自分中心の細かいことに偏りがちとなります。大きな視点よりも家づくりが考えられると、より豊かな家づくり、そしてそれが豊かな街づくりに繋がるんじゃないかと思います。

家づくりニュース記事より

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