建て主さんとの打合せの中、あるきっかけで老子の話となりました。
老子の原文は難しくお手上げだったのですが、簡潔な英訳や今の言葉で書かれている「タオー老子」(加島祥造著)を読んでから、普段の生活や仕事にも通ずることがあり好きな本の一冊となったのでした。
その中に「無之以爲用」という一節があり、これは空っぽこそ役に立つという話しで、例えば器はかならず空洞の部分があって役にたつ。中が詰まっていたら役に立たない。同じくどの家にも部屋があるが、モノであふれていたり間取りが悪いと使えない。適所に窓や戸を開け、居心地よいうつろな空間があること。それが家の有用性だと。
私たちはモノが役立つと思うけれど、実は内側の何もない虚のスペースこそ、役立っているのだという意味なのです。
どんなに高価な材料や設備システムを使っても良い家はできません。タオや禅は、その思想だけではなく音楽や絵画、デザインの分野にも影響を与えていて奥深く面白いのです。
画像は龍安寺にある蹲のデザイン。中央の水を「口」にみたて時計回りに「吾唯足知」(われただたることをしる)となっている。これもtaoと繋がっていて面白い。