河井隼雄の本を読んでいます。
その中に博物館内にある文化財保存修理所の話がでてくる。絵画・文書・織物・彫像などの修復をおこなう場面。織物などに欠けた部分があると、その布の素材を知らべ、欠損部分の糸の織目を数え、染料の種類染め方法を研究し同じモノをつくって補修してゆく。何年もかかるのはざらで、根気強く、気の遠くなるような作業です。
修復するとき、糸がもとの糸より強いと、それは結果的にもとの糸を傷めることになる。もとの糸より少し弱いのが良いがその加減が難しい。欠けた部分をただ直せば良いのではなく、過去の歴史や状況、今の環境・技術を研究しながら修復してゆく”修復する時に、ひとつとして同じケースはない、そのたびごとに考えをあらたに創造力を働かし、初心忘るべからず”という内容。
設計の仕事は、修復ではなくつくってゆく作業(リノベーションもありますが)しかし共通する部分は多のではないかと思うのです。設計相談に来る人は趣味嗜好、考え方、家庭環境、敷地状況さまざまです。住む人つかう人と一緒に考え、その場の環境・状況を読み、ひとつひとつ問題を解決しながらつくってゆく。ただ技術的に効率よくつくれば良いという分けには、なかなかいかないのです。