直指天(じきしてん)と、外壁に刻まれた文字。
この語は、「不立文字」「教外別伝」などと同じく「禅」の根本を表す「直指人心、見性成仏」から引用されている。教説や文字などに惑わされず、自分の奥底の心をただひたすら見つめ、本性を見極めるという意味なのだ。戦後、近代化の流れに則しつつも東洋思想を重んじた、初代学長である上野直昭先生が残された言葉である。
愛知県立芸術大学は、1966年吉村順三たちの設計により完成した。広々とした敷地に分棟形式で配置された、ピロティー+打放しのダイナミックなモダニズム建築である。学生たちは、この環境の中で自分自身と向かい合う。
建築の迫力ある構成や配置方法も魅力的だが、吉村順三の設計は、ヒューマンスケールな空間がしっくりとくる。螺旋階段から落ちる光は人を優しく包み込むのです。
いまキャンパスでは、大規模な建て替えが検討されていて問題となっている。
地域社会と密接に関わりつくられたきた「ゴジカラ村」、そして行政に関わりつくられた「愛知県芸」、どちらも完成してから30-40年、その後の建築の取り扱われ方に興味深く感じたのである。